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円高・円安は日本企業にどんな影響があるの?
円高になると、輸入品の価格が下がり、国内の物価全体が安定するため、消費者にとっては生活がしやすくなります。
しかし、企業にとってはどうでしょうか?
企業への影響を考える際、「輸入型企業」と「輸出型企業」に分けて考えることが重要です。
まず、円高になると輸入型企業(商品や原材料の仕入れの多くを輸入に頼っている企業)は、輸入品を安く仕入れることができるようになります。

そうなると、上の図にあるように、価格競争力が向上して売上げ拡大が期待できるため、円高は業績アップへの追い風となります。
例えば、海外で商品を製造しており、カジュアル衣料品店ユニクロを経営しているファーストリテイリングや、家具・インテリア販売の最大手ニトリ、紙の原材料パルプを輸入している王子製紙などが円高の恩恵を受けやすい企業です。
逆に円安になると、これまでと同じ商品や原材料を輸入する場合でも仕入価格が高くなるので、価格競争力が低下し、売上げ縮小・業績ダウンとなりがちなため、輸入型企業にとっては逆風となります。
円安になると海外の売上げの円換金に有利
輸出型企業(商品の販売先が海外中心の企業)の場合はどうでしょうか。
米国に自動車を輸出している企業の例で考えてみましょう。

上の図のように、東京の豊丸自動車がニューヨークのウルトラ社に自動車を定期的に500台輸出し、その代金として500万ドルを受け取っているとします。
このとき、為替レートによって円に換えた時の金額は、次のようになります。
1ドルあたり150円✕500万ドル=7億5千万円
1ドルあたり140円✕500万ドル=7億円(1ドル140円の円高)
1ドルあたり160円✕500万ドル=8億円(1ドル160円の円安)
つまり、円高になると、豊丸自動車は円の受取代金が減って損をし、円安になると受取代金が増えて得することとなります。
このように同じ商品を輸出する場合でも、円高になると受取代金が減り、円安になると受取代金が増えることになります。海外での売上げが大きい企業にとって、これは大問題です。
日本の大手企業を例にあげると、トヨタ自動車などの大手自動車メーカーやソニーなどの大手電機メーカーは海外での売上げの割合が大きいので、円安は追い風となって業績が上がり、逆に円高は逆風となって業績が下がります。
円高で利益を得る輸入型企業とは?
円高になると、輸入企業は原材料や商品を安く仕入れることができます。その結果、コスト削減が可能になり、価格競争力が高まるため、売上や利益が増加しやすくなります。
円高で儲かる業種・企業の例
- 衣料品業界:ファーストリテイリング(ユニクロ)
- 家具・インテリア業界:ニトリ
- 製紙業界:王子製紙(パルプの輸入が多い)
- 商社:三井物産、住友商事(三菱商事も円高メリット銘柄として注目)
- 食品業界:スターバックスジャパン、マクドナルドジャパン(原材料の輸入が多いため)
また、円高メリット銘柄の中には高配当を実施している企業も多く、投資家にとっても魅力的です。
円安が追い風となる輸出型企業とは?
円安になると、輸出企業は海外での売上を円換算した際に利益が増加します。そのため、円安時には輸出産業が活況を呈します。
円安で儲かる企業・業種の例
- 自動車業界:トヨタ、ホンダ、スズキ(日産も円安メリットを享受)
- 電子機器・電機メーカー:ソニー、パナソニック、シャープ
- 精密機器業界:キャノン、ニコン
- 観光業界:JTB、HIS、ホテル業界
外国人観光客の増加にも影響する
円安になると、外国人観光客の増加によって観光業界も恩恵を受けます。円安によって日本の旅行費用が割安になり、訪日観光客が増加する傾向にあります
大きな収入源となる外国人観光客は円安になると増え、円高になると減る傾向があります。
円高・円安は消費者にどんな影響があるの?では、円高(外貨安)になると海外旅行に安く行けると書きましたが、外国人からみると、逆に外貨高(円安)になれば日本旅行に安く行けるわけです。
日本に来た外国人観光客は観光地のホテルに泊まり、土産物を買い求めますから、たくさんのお金を落としてくれます。それが円高になると外国人観光客が減少し、土産物もあまり買わなくなるため、観光地の企業の売上げは減ります。
円高に強いセクターとは?
円高に強いのは、主に輸入依存度が高い業種です。
- 小売業界(アパレル・家具など)
- 商社(特に資源を輸入している企業)
- 外食産業(輸入食材を多く使用)
- 運輸業界(原油価格の影響を受けやすい)
これらの業界は、円高時に株価が上がる傾向があります。
円高になると企業にとってどのようなデメリットがあるか?
円高は輸出企業にとっては逆風となります。
- 海外売上の円換算額が減少
- 輸出商品の価格競争力が低下し、売上減少
- 海外進出企業にとっての利益縮小
また、円高によって外国人観光客が減少し、観光業界が打撃を受ける可能性があります。